レスリング0-0の衝撃…「点が0なら作っちゃえばいいじゃない!」
すっかり世の中のブーム・アクセス数増加に味を占め、もう一個レスリング記事を書く。うん、これで最後にしよう。
こちらの記事で、同点の時の勝敗決定方法について書いた。
レスリングにおける同点の場合の勝敗決定方法
2013年からの新しいルールでは同点に追い付いたとき、
- ビッグポイントの多い選手 (1回の技で取った得点が大きい方)
- 相手にコーションを与えた数の多い選手
- ラストポイントを取った選手
の順で決まると決められた。
なるほど、このルールだと両方の選手に1点以上得点が入った場合、同点の場合はどう転んでも勝敗を決めることができる。良くできた制度だと思う。ただ、これだと0-0の時はこの方法で勝敗を決定することができない。
その時は延長戦になるのか?いや、なんかでレスリングからは延長戦はなくなったって聞いたぞ?そう思いながら調べていたら、なかなかに驚愕の結果が返ってきた。
レスリングが0-0で終わることはあり得ない。というか強引にでもあり得ないことにする
オリンピックなどでレスリングの試合を見られた方なら1度は必ず目にしたことがあると思う。
レスリングではパッシブといって、消極的なレスラーに対して1回目は口頭で注意され、2回目の注意で「アクティビティタイム」というものが始まる。柔道の「指導」みたいなもんだね。
アクティビティタイムは30秒で終了し、その間両者に得点が入らなかった場合は相手に1点が入り、注意された選手には警告がつく。つまりアクティビティタイム終了時にはどちらかに点数が入ることになる。
これを踏まえて。
(フリースタイル)
第1ピリオドの2分経過で両者0-0の場合審判団はどちらかの選手に消極的レスラーとして摘発しなければならない。 摘発されたレスラーは2回目の手順で行われる。
(グレコローマン)
もし0-0で終了した場合は最後に警告を与えた選手が勝利者になる。しかし、1分以内で1回目の摘発を推奨しているので0-0の状況は考えていない。
2013 レスリングのルール変更についてより(PDFファイル)
ここでの注目点はここ。フリースタイルに関しては、「第1ピリオドの2分経過で両者0-0の場合審判団はどちらかの選手に消極的レスラーとして摘発しなければならない。 摘発されたレスラーは2回目の手順で行われる。」
つまり2分たっても0-0なら、「どっちかが守りすぎて点が入らないんだ。うんそうだ。そうに違いない。だからどっちかに注意を与えるぞ。その時は口頭注意をすっ飛ばしてアクティブタイムに入るぞ」ということになる。
ということは、第1ピリオドの段階で0-0で終わることはすでにあり得ない。だから延長戦はあり得ない。
グレコローマンについては触れなかったが、ほぼどっこいどっこいと考えていいだろう。
ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
いいのかレスリング!そんな強引な決め方でいいのか!と一瞬思ってしまう。
ただ、このルール変更はレスリング協会にもやむを得ない理由もある。
レスリング、オリンピック除外の危機を乗り越えるために
レスリングがオリンピックの実施競技に引き続き選ばれた大きな理由として、国際レスリング連盟が競技存続の危機に素早く対応し、改革の姿勢を見せたことが挙げられる。
レスリングは1896年の第1回アテネ大会から一部の大会を除いて行われてきた伝統競技で、2004年のアテネ大会からは女子も正式種目になった。
日本はこれまでオリンピックで金メダル28個を含む62のメダルを獲得し、お家芸とも言われてきたが、ことし2月のIOC理事会でレスリングが除外候補に決まった。
5月の国際レスリング連盟の総会で、より観客に分かりやすく、かつ選手に積極的に攻撃を促すルールへの変更や、女性委員会を新設し、将来的には女性の副会長を置くといった組織の改革案を決定。
レスリング存続の決め手は? 20年東京オリンピック、IOC総会が残留を決定 THE HUFFINGTON POSTより
要はオリンピックから除外される危機を乗り越えるためにより攻撃的に(より点数が入りやすい)ルール変更を行った。だから「そんなルールの中、点数がはいらないなんてことはあるわけねぇだろ!」ってことになった…と推察しておこう。
いやぁ、レスリングのルール変更は想像以上にネタが満載だった。こちらとしても大いに助かった。
なにはともあれリオ五輪では男女合わせて金5銀3という驚愕の結果を残した。東京五輪も楽しみだし、今度世界選手権の時もしっかり見てみたいと思ってます。それが3つもネタを書かせてもらった恩返しかな?
ちなみに次回のレスリング世界選手権は2017年8月にパリで行われる予定。