シライ2、失敗していたときの恐ろしさ(主に世間にとって)
「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」。リオ五輪種目別決勝の跳馬で、19歳(リオ五輪現在)の白井健三が見事に成功させ新技。おそらく「シライ2」と呼ばれることとなるこの技は、すでに「シライ/キムギフン」という技名がついている「伸身ユルチェンコ3回ひねり」にもう半分ひねり技をつけたもの。
これがシライ/キムギフン
これが新技、シライ2(仮称)
比べていただければ分かるとおり、それぞれ飛び方は同じだが着地の時に
- シライ/キムギフンは後ろ向きに着地。
- シライ2は半分ひねりを加えた分前向きに着地。
この半回転ひねりを実行するのは今まさに着地しようとする前の0.1秒前(推定)というとんでもない技。さすがは「ひねり王子」「ツイスト・プリンス」である。
永遠に「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」という技名になるかもしれなかった
新技を申請しFIGの定める国際大会で新技を成功させれば、コバチやトカチェフといった自らの姓がついた技を新技につけることができるのだが、もしも新技を失敗してしまうと、今後は誰がその同じ新技を国際試合で成功させようとも、その技に人の姓がつけられることはなく、その技には技の状態を表した長々とした名前だけが残る。
これはどういうことか。
もし白井がオリンピックでこの技を失敗していたとする。すると将来この技を白井が成功させても「シライ2」という技名がつかなくなる。それどころか他の選手が成功させてもその選手の名前がつくことがなく、永遠に「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」としか呼ばれなくなる。つまり白井が失敗していればこの技に個人名がつくことはなく、そう考えると成功させるのと失敗してしまうのは天と地ほどの差だった。
逆に言うとこれからまた命名されるであろう技「シライ3」が「シライ2」になるだけ、とも言えるのだけれども。
なんか体操業界厳しい。
もう一つ誕生した新技「ラディビロフ」(仮称)
ちなみに今回のリオ五輪種目別決勝の跳馬では新たな技が誕生している。
前方抱え込み4回転 イーゴリ・ラディビロフ(ウクライナ)
空中で4回転するというこれも恐ろしい技。着地の瞬間に尻もちをついたため点数は伸びなかったが、この技自体は成功と認定されており、おそらく「ラディビロフ」と言う技がつくことになるだろう。ちなみにシライ2の価値点が6.4に対して、この技は7.0と難易度はこちらの方が上。
もしかしたら将来白井は2回の試技で「シライ2」と「ラディビロフ」を成功させる日が来るかもしれない。
ただし、この技にひねりはない。
現在体操界ではすでにシライ3が存在するので、白井にとって新技はこれで5つめ。まだ19歳。これからシライという技はいくつ生まれるのか想像すらつかない。